B型・C型肝炎の治療に関する取り組み
Hepatitis当院は熊本県・福岡県における指定医療機関です。
肝炎の治療には、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤治療や、C型肝炎に対するインターフェロンフリー治療があります。各県ではこれらの肝炎治療に対し、治療費の助成が行われておますが、いずれの治療に関しても専門医療機関での診断書作成が必要です。
当院は熊本県・福岡県における指定医療機関となっていますので、そのまま診断から治療まで行うことができます。
また、熊本大学病院消化器内科との共同臨床研究にも参加しており、定期的に治療効果の評価を行っております。
肝炎治療について
肝炎は定期経過観察を必要する病気で、放置して肝炎が進行した場合、肝硬変になってしまったり、肝臓がんができてしまうことがあります。治療が必要な状態である場合は、現在B型肝炎、C型肝炎に対して、ウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスを排除するための飲み薬が開発されています。
慢性C型肝炎に対して、2014年からインターフェロンを使わない直接作動型抗ウイルス薬(アスナプレビルとダクラタスビル併用療法、ソフォスブビルとレディパスビル配合薬、パリタプレビルとオムビダスビル配合薬等)による治療が行われ、副作用が少なく、良好な治療成績が得られました。
2013年11月から2015年10月までに行った、経口剤(DCV+ASV:ダクラタスビル+アスナプレビル併用療法)とインターフェロン治療(SMV:ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビル3剤併用療法)の自験例です。
ALTは肝細胞に含まれる酵素で、炎症によって肝細胞が壊れると上昇する値です。30U/L以上が半年続く場合を慢性肝炎と診断します。経口剤を始めるとインターフェロン治療群とくらべて、速やかな低下が見られています。
HCV-RNA量はC型肝炎ウイルスの量を表しており、経口薬群においてもインターフェロン治療群と遜色なく、低下が認められています。
副作用の比較
経口2剤(ASV+DCV)群(10例) | インターフェロン治療群(9例) | |
全事象 | 1 | 21 |
ALT増加 | 1 | 3 |
頭痛 | 0 | 1(中止) |
発熱 | 1 | 3 |
食欲不振 | 0 | 4 |
倦怠感 | 0 | 5 |
脱毛 | 0 | 2 |
発疹 | 0 | 3 |
経口剤による治療ですが、今まで行われていたインターフェロンを含んだ治療と比較して副作用が少なく、治療が継続しやすくなっています。C型肝炎のウイルス排除を目的とした治療は、治療薬終了後、24週間ウイルスが出現しなければ排除成功と判定します。
今回は、日本で一番初めに導入されたインターフェロンフリー療法であるアスナプレビル+ダクラタスビル併用療法(24週間継続内服)について自験例の一部の経過をお示ししました。この分野では同様の経口剤であるソフォスブビル+レディパスビル配合剤(12週間継続内服)、パリタプレビル+オムビタスビル配合剤(12週間継続内服)などが次々と開発され、現在90%以上のウイルス除去が見込まれており、現在当院でも順次導入を開始しております。
2015年11月から2016年5月までにソフォスブビル+レディパスビル配合錠による治療を行った当院での自験例の経過です。アスナプレビル+ダグラタスビル併用療法による治療と同様に速やかな抗ウイルス効果が認められ、副作用についても現在のところ重篤な事象は認められておらず、良好な経過が得られております。
2019年には、ピブレンタスビル+グレカブレビル配合錠による治療だけでなく、非代償性肝硬変に対してもソホスブビル+ベルパタスビル配合錠による治療が可能となりました。それぞれに特徴があるお薬ですので、肝臓専門医の診断をもとに患者様とも相談の上、薬剤の選択を行っていきます。
慢性C型肝炎で治療を悩まれている方がいましたら、まずは病院を受診してください。
【参考サイト】日本肝臓学会:学会発行冊子
医療費の助成について
肝炎の治療薬は、良好な治療成績が得られている一方、1錠1万円から5万円という高価な薬を12週から24週間連日内服する必要があり、経済的負担が懸念されます。
そこで各県では肝炎治療に対し、治療費の助成が行われており、上記治療が世帯の市町村税(所得割)課税年額に応じて、月額1万から2万円で治療を受けることができます。インターフェロン治療を受け、ウイルスが消えなかった方にも非常に効果があり、良好な成績を収めています。
慢性B型肝炎に対しても、ウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノホビル等)が開発されており、連日内服することによって炎症の改善や、発がんリスクを低下することが証明されています。こちらの治療に関しても県からの治療助成が行われており、経済的負担が軽減されています。
医療費助成を受けたときの自己負担額 | |
世帯全員の市町村税(所得割)課税年額の合計 | 自己負担限度額(月額) |
235,000円以上 | 20,000円 |
235,000円未満 | 10,000円 |
医療費助成の流れ